ISEP Annual Activity Report 2022-23

環境エネルギー政策研究所 活動報告 2022-23

所長メッセージ

地域エネルギー2.0へ

世界全体で太陽光など自然エネルギーと電気自動車(EV)などモビリティの文明史的な大転換(破壊的変化)が加速しています。

これは同時に地域分散型への構造転換でもあり、EU再生可能エネルギー指令(RED II)やドイツ再エネ新法(EEG2023)のように、地域参加・地域所有型の「地域エネルギー2.0」が改めて重要視されています。

他方、世界の流れに背を向ける日本は、原子力回帰や化石燃料・化石車に固執し取り残され、太陽光や風力への社会的な反発も高まっています。これらを内から変革するためにも、「地域エネルギー2.0」は日本でこそ必要としています。

私たちISEPは設立時から「エネルギーデモクラシー」を掲げて地域エネルギー事業を着実に進めてきました。その経験を活かして、デンマークと連携した大潟村での日本初の第4世代地域熱供給や地域に根ざした営農ソーラーなど次のステージの「地域エネルギー2.0」へと研究と実践を進めています。

今後もISEPへのご支援・ご指導をお願いいたします。

所長 飯田哲也

理事メッセージ

国と同様に地域でも、自然エネルギーに関してはアクセルとブレーキの両方を踏んでいます。脱炭素の観点からの促進を掲げる地域がある一方で、地域トラブルへの警戒感から禁止区域や抑制区域の設置が広がっている地域があります。ISEPがさまざまなステークホルダーとともに進めている社会的合意に関する研究や地域からのビジネスモデル開発は今後もさらに重要性を増していくでしょう。

インターンやボランティアには、コロナ前の活気が戻りつつあります。2023年度の夏は、海外と日本の双方からインターン生10名以上がお互いに学び合い、ボランティアの方とも交流する機会をつくる予定です。今後も、環境とエネルギーに関わる人材を広く育成していきます。

理事/事務局長/主任研究員 山下紀明

福島事務所より

13年目の心のざわつきと落ち着き

再生可能エネルギーに期待を寄せ、ドイツに学んできたはずの福島が迎えた2023年。年度はじめに2つの対照的な出来事がありました。ひとつは4月15日にドイツが最後の原発を停止して原発からの脱却を現実のものとしたこと。もうひとつは、そのわずか1ヶ月後の5月16日に日本が原発回帰に舵をきったことです。

そのあまりにも大きいギャップに、私たちの心はざわつきます。差が開くばかりの両国ですが、ソーラーシェアリングでは、まだ肩を並べています。

4回目となる営農型発電の国際会議『Agrivoltaics2023』が韓国でおこなわれ、現地視察に来日したドイツなどのリーダーたちが、4月16〜18日には千葉県匝瑳市の設備や、ISEPがリードした二本松営農ソーラー、垂直営農ソーラーを見学し、福島で国際シンポジウムをおこないました。そこでは日本の営農ソーラーが賞賛を得ました。ここから発展する研究やプロジェクトがありそうです。

最近読んだ著書の中で、ドイツのメルケル元首相が語った言葉が印象的でした。

「わたしたちは歴史の流れのなかに植え込まれていますが、その歴史のなかで他の人々がわたしたちの前に過ちを犯し、わたしたちはそこから、自分たちも間違いを起こしうるという意識を持って、学ぶべきなのです。これはわたしにとって心を落ち着かせてくれるメッセージです。」

間違いの前例をネタに足の引っ張り合いをすることなく、また、危機感をつのらせるのではなく、ロジカルに冷静に自分たちを見つめて、実務を積み重ねることでしか現実は変わらない。国の大きな舵取りも各地方それぞれの船の方向に左右されます。特に食料を生産する地方が果たす役割は大きいと感じ、ソーラーシェアリングをはじめとする各地での動きを加速させていきます。

福島事務所 所長 近藤恵

活動概要ハイライト

研究・政策提言と地域での実践の両方に取り組んできた成果を、さらに次の活動へと展開させています。長野での営農型太陽光発電は地域の拠点づくりに、営農型太陽光発電の国際的ネットワークは国際共同研究へ、大潟村での事業立ち上げ経験は他の地域への事業へと活かしていきます。

八ヶ岳山麓の営農型太陽光発電所の完成

長野県南牧村・野辺山での営農型太陽光発電所が完成し、2022年11月4日に竣工式をおこないました。ISEPや生活クラブ生協、地元の農業者が出資する野辺山営農ソーラー株式会社が運営し、パネル下ではほうれん草を栽培します。隣接する別荘を新たな地域活動の拠点とすべく、関係者とのワークショップをおこなっています。

ソーラーシェアリング国際セミナー開催

2023年4月17日に、ドイツ、米国、フランス、台湾からのゲストを招き、営農ソーラーの国際的動向と国際協力をテーマとしたセミナーを福島と東京で開催しました。直前に開催された韓国での国際会議から多数のゲストが参加し、今後の国際協力に向けたネットワークを強化しました。

大潟村での脱炭素先行地域事業が本格化

ISEPが支援した大潟村の計画は2022年4月に第1回脱炭素先行地域に選定され、事業化が進められてきました。2022年8月には地域エネルギー会社オーリスを設立し、ISEPは出資および運営をおこなっています。大潟村の再エネ100%への転換に向けて、太陽光発電や地域熱供給事業を実践していきます。

Policy Advocacy & Research

政策提言・調査研究

Community Power

地域エネルギー事業

Networking

ネットワーキング

PHOTOS & IMAGES

メッセージ

野辺山営農太陽光発電所に隣接する別荘を活用し、地域の内外を繋ぐプラットフォーム型のコミュニティ拠点を共創するプロジェクトを推進しています。過去と未来、宇宙と大地が交差する場所で、自然エネルギーや農業、食などの取り組みを通じ、個人および人類としてのより良い生き方を探求・実践していきます。

谷口千春minagarten ミナガルテン

新潟で多くの仲間と自然エネルギーをつくりながら、未来の世代に残すべき「新しい社会」を目指しています。原発推進のDX束ね法が成立し、いよいよこの国が迷走を極めつつありますが、「希望は地方にあり」です。地道に活動を進めていきます。

佐々木寛「おらって」にいがた市民エネルギー協議会

データで見るISEP

109

正会員個人

9

正会員団体

70

協賛会員個人

7

協賛会員団体

20

インターン

10

ボランティア

地域エネルギー事業開発支援実績

86.484
累積設備導入量
253.6
累積事業規模

Design the future of energy democracy

エネルギーデモクラシーの未来をデザインする

環境エネルギー政策研究所は、持続可能で自立した地域と日本の自然エネルギー100%の実現に向け、政策提言と地域エネルギー事業の実践、人材育成を2000年から続けてきた独立・非営利の組織です。自然エネルギーに関わる政策・技術・コミュニティ・金融を結びつけ、1mmでも現実を動かすための取り組みを行なっています。
これからも私たちは、未来をみんなで選び取る「エネルギーデモクラシー」をコンセプトに、人と人、エネルギーと地域課題、地域と世界をつないでいきます。
そしていま、電気・熱・交通の統合やデジタル化によって、エネルギーの新しい世界が見えはじめています。私たちは自らの役割を再定義して、国内外の先駆的知見を組み合わせたソーシャルモデルとその価値を提案し、現実的な問題解決と大きな転換構想の双方を通して地域と日本のエネルギー転換に貢献し続けます。
Integrated development of policy, business, finance, and community

政策・ビジネス・ファイナンス・コミュニティの統合的発展

環境エネルギー政策研究所は、(1)エネルギー政策、(2)エネルギー 事業、(3)ファイナンス、(4)コミュニティの4つの領域を主要な活動領域としています。

持続可能なエネルギー社会を実現する上では、これらの領域の成熟と発展が不可欠であり、ISEPは地域エネルギー事業の実践を通じて新たなビジネス・ファイナンスモデルを構築し、その支援政策の提案をおこなっています。

Support

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