ISEP Annual Activity Report 2024-25

環境エネルギー政策研究所 活動報告 2024-25

所長メッセージ

地域エネルギー2.0の実現へ

市民と地域が主導するエネルギー転換

世界全体では、近年、自然エネルギーと電気自動車(EV)の加速度的な普及拡大を原動力とする文明史的なエネルギー大転換が進みつつあります。同時に、エネルギーシステムは中央集権型から地域分散型へと移行しつつあります。この大きな変化を、私たち自身にとって、そして地域社会や環境にとって望ましいものにするためには、外部からの変化を待つのではなく、私たち一人ひとり、そして地域社会が主体となり、「自分ごと」として積極的に取り組んでいくことが求められます。

しかし、日本では依然として原子力回帰や化石燃料・化石燃料車に依存する政策や産業/経済が続いています。また、「メガソーラー問題」などに端を発して、太陽光発電や風力発電に対する社会的な反発も強まっています。この流れを変え、持続可能なエネルギー社会へと転換するためには、市民と地域が主体となる「地域エネルギー2.0」の実現が不可欠です。

ISEPは設立以来、「エネルギーデモクラシー」を掲げ、地域に根ざしたエネルギー事業を推進してきました。その経験を活かし、環境省・脱炭素先行地域事業をはじめ、全国での営農型太陽光、家庭向けオンサイトPPA・地域オフサイトPPA、EV普及支援、さらにはデンマークとの連携による日本初の第4世代地域熱供給など、次世代の「地域エネルギー2.0」の構築に向けた研究と実践を進めています。

これからも引き続き、ISEPへの変わらぬご支援・ご指導を賜りますようお願い申し上げます。

所長 飯田哲也

理事メッセージ

2025年3月に、地域エネルギー事業や自然保護の専門家とともに数年かけて議論してきた「地域にとって望ましい再生可能エネルギーチェックリスト 太陽光・陸上風力編 ver.1.0」を公開しました。より多くのステークホルダーをポジティブにつなぎ、地域からのエネルギー転換を進めていくために活用されるよう拡げていきます。

ISEPは2025年9月11日に団体設立から25周年を迎えます。会員のみなさまをはじめ、これまでISEPにかかわり、支えてくださった方々に改めて感謝申し上げます。これまで、国内外からインターンやボランティアとしてかかわってくださった方も350名以上を数え、ISEPの活動に参加し、それぞれの未来に向かっています。

これからもエネルギーデモクラシーの未来に向けて、持続可能性の芽を育てていきます。

理事/事務局長/主任研究員 山下紀明

福島事務所より

2019年に訪れた福島市在庭坂地区。低圧の営農ソーラーが1ヶ所あり、周りは放置されたナシ畑(コンクリート柱や鉄線が藪で覆い尽くされていた)やリンゴ畑。草刈りがされていて綺麗にはなっているが不動産業者の名が書かれている「売地」の看板。

それから6年の歳月をかけて、5種類が一度に見れる「営農ソーラー見本市」のような土地になった。

ひとつは、農作物の生育に応じて日射を制御し、太陽光の日射角度に応じて最適な発電量を確保する可動式営農ソーラー。

ひとつは、朝夕などの日射が低い時間帯にも発電効率を高め、放牧柵としての物理利用もする垂直営農フェンス。こちらには、加えて農地の中央にソーラーパネルで木陰を作り放牧中の牛を夏の強い日射から防ぐ木陰ソーラーを配置するハイブリッドタイプ。

どれも農業者の都合を優先して設計してある。

福島事務所 所長 近藤恵

活動概要ハイライト

2024年度は、新たに複数の地域でのエネルギー計画立案に貢献しました。また、再エネと蓄電池の普及で先端を行くオーストラリアで調査をおこなったほか、EVの普及に関する調査研究・自治体向けセミナーの実施など、幅広い領域で活動を展開しました。

地域エネルギー支援

ISEPは、地域のエネルギー地産地消モデル実現を支援しており、2024年度は浦幌町、遊佐町、江戸川区、匝瑳市などで活動してきました。特に、沖縄で太陽光+蓄電池システムを一般家庭に導入し、これらを一括して需給管理するエリアアグリゲーションシステムを展開するネクステムズ社と協働し、地産地消モデルの水平展開を目指しています。

再エネ100%の最先端 オーストラリアを視察

オーストラリアは近年、風力・太陽光発電と蓄電池の導入を急速に拡大しています。アデレード、シドニー、キャンベラを訪問し、政策や市場、技術、コミュニティの動向を調査し、日本のエネルギー転換の方策を検討するための知見を得ました。帰国後は視察報告会を開催し、第7次エネルギー基本計画への提言について議論しました。

EV推進のイベント開催とガイドライン発行

Climate Group、JCLPとの協働のもと、モビリティ分野のカーボンニュートラルに向けて、産業界と政府が課題を共有し、連携を強化するイベントを開催しました。さらに「地方自治体のEV普及戦略(2024年版)―EV充電インフラ整備ガイドライン」を発行し、自治体がさらなるEV普及に向けた取り組みを進めるための指針を提供しました。

Community Power

地域エネルギー事業

  • 北海道浦幌町の地球温暖化対策計画区域施策編の策定を支援するとともに、住民の学びと対話の場として<うらほろエネルギーアクション>を企画・実施しました。
  • 山形県遊佐町の地域エネルギー事業計画づくりの支援をしました。
  • 東京都江戸川区の地域エネルギー事業計画づくりの支援をしました。
  • 京都・西陣織の老舗 細尾の再エネ100%に向けた取り組みの支援をしました。
Networking

ネットワーキング

PHOTOS & IMAGES

メッセージ

今年度からISEPに主任研究員として所属致しました。同時に英国ストラスクライド大学にアカデミックビジターとして在籍し、現在はグラスゴーに研究拠点をおいて、いわば国際リモートワークの形で参加しています。地の利を活かして、英国を中心とする国際動向や最新技術情報を日本の皆様にお届けする役割を果たしたいと思います。

安田陽ストラスクライド大学 電子・電気工学科 アカデミックビジター / 九州大学 洋上風力研究教育センター 客員教授 / 環境エネルギー政策研究所 主任研究員

昨年からISEPのインターンシップ担当を勤めています。2024年度は一年間で、アフリカ、アジア、オーストラリア、ヨーロッパ、アメリカの15カ国から40人以上のインターンを受け入れました。これからも文化を超えた架け橋となり、世界中の意欲ある学生と一緒にエネルギー転換を進めていきたいと思います。

クリスティアン・ドートISEP 研究員

データで見るISEP

87

正会員個人

8

正会員団体

59

協賛会員個人

6

協賛会員団体

20

インターン

10

ボランティア

地域エネルギー事業開発支援実績

86.484
累積設備導入量
253.6
累積事業規模

Design the future of energy democracy

エネルギーデモクラシーの未来をデザインする

環境エネルギー政策研究所は、持続可能で自立した地域と日本の自然エネルギー100%の実現に向け、政策提言と地域エネルギー事業の実践、人材育成を2000年から続けてきた独立・非営利の組織です。自然エネルギーに関わる政策・技術・コミュニティ・金融を結びつけ、1mmでも現実を動かすための取り組みを行なっています。
これからも私たちは、未来をみんなで選び取る「エネルギーデモクラシー」をコンセプトに、人と人、エネルギーと地域課題、地域と世界をつないでいきます。
そしていま、電気・熱・交通の統合やデジタル化によって、エネルギーの新しい世界が見えはじめています。私たちは自らの役割を再定義して、国内外の先駆的知見を組み合わせたソーシャルモデルとその価値を提案し、現実的な問題解決と大きな転換構想の双方を通して地域と日本のエネルギー転換に貢献し続けます。
Integrated development of policy, business, finance, and community

政策・ビジネス・ファイナンス・コミュニティの統合的発展

環境エネルギー政策研究所は、(1)エネルギー政策、(2)エネルギー 事業、(3)ファイナンス、(4)コミュニティの4つの領域を主要な活動領域としています。

持続可能なエネルギー社会を実現する上では、これらの領域の成熟と発展が不可欠であり、ISEPは地域エネルギー事業の実践を通じて新たなビジネス・ファイナンスモデルを構築し、その支援政策の提案をおこなっています。

Support

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