ISEP Annual Activity Report 2023-24

環境エネルギー政策研究所 活動報告 2023-24

所長メッセージ

市民と地域が自ら創りあげる自然エネルギー100%社会へ

世界全体で自然エネルギーと電気自動車(EV)による文明史的な大転換が始まっています。それを地域社会や環境にとって望ましい変化に結びつけるには、外から・上からの変化を受け身で待つのではなく、私たち一人ひとりや地域社会が自ら「自分ごと」として担い、当事者として進めていくことが必要です。

2024年度はエネルギー基本計画の改定に向けた議論が本格化する年です。これまで20年以上にわたってISEPが培ってきた経験と世界各地でのネットワークを活かした世界最先端の政策や社会ビジネスモデルを踏まえつつ、同時に、千葉県匝瑳市での環境省・脱炭素先行地域事業や全国の複数の地域での営農型太陽光や家庭向けオンサイトPPA・地域オフサイトPPA、EV普及支援などの実践に裏付けられた、先進性と現実性のある政策提言や地域エネルギー社会「地域エネルギー2.0」の構築を進めてゆきます。

引き続きISEPへのご支援・ご指導をお願いいたします。

所長 飯田哲也

理事メッセージ

気候危機とエネルギー危機が迫りくる中、脱炭素化とともに自然エネルギー100%を目指す世界の動きが加速しています。

日本国内では、3.11以降に加速した自然エネルギーの普及と電力システムの改革などが転換点を迎え、新たな発展が期待されていますが、持続可能なエネルギーへの転換のロードマップはいまだ不透明です。一方で、地域や企業での取組みは広がりを見せており、さまざまなプレーヤが連携しはじめています。

国内でも太陽光発電を中心とした変動性自然エネルギー(VRE)の比率が10%を超えましたが、出力抑制の増大や、非FITのPPAなどの地域での広がり、熱や交通部門でのエネルギー転換の遅れなど多くの課題があります。

地域で自然エネルギー100%を目指す脱炭素先行地域などさまざまな取り組みを引き続き研究・支援していきたいと思います。

理事/主席研究員 松原弘直

福島事務所より

2023年度は、福島県二本松市の市民電力ゴチカンが設置した、垂直型営農ソーラー・韓国MDS社製の最新営農型架台(回転直立式)の設計・導入を支援しました。

また、山形県遊佐町と協働し、エネルギーを起点とした未来づくりを話し合う場として「遊佐地産地消エネルギー協議会(通称:ゆざみらい)」を設立しました。さらに、2024年3月にはこの協議会から生み出された地域エネルギー会社「ゆざみらいエナジー株式会社」に参画しました。

福島で培った営農型太陽光発電の知見を、東北の近隣地域でも活用し、実践を進めていきます。

福島事務所 所長 近藤恵

活動概要ハイライト

2023年度は、前年度に採択された秋田県大潟村に続き、千葉県匝瑳市の脱炭素先行地域における計画立案に貢献しました。また、第4世代地域熱供給に関してデンマークとの交流を深めるとともに、EVの普及に関する調査研究・自治体向けセミナーを実施するなど、新たな活動領域を展開しました。

千葉県匝瑳市の脱炭素先行事業に参画

ISEPは、環境省の第4回脱炭素先行地域事業に選抜された千葉県匝瑳市の脱炭素化推進プロジェクトに共同提案者として参画します。このプロジェクトでは、水田での営農型太陽光発電をはじめとして、さまざまな脱炭素化に関する取り組みを実施し、エネルギーの地産地消モデルの実現を目指します。

第4世代地域熱供給フォーラム国際シンポジウム

2023年10月20日、第4世代地域熱供給やスマートエネルギーシステムの研究に関して、国際的な第一人者であるヘンリク・ルンド教授(デンマーク・オールボー大学)をスピーカーに迎え、国際シンポジウムを開催しました。また、秋田県大潟村での地域熱供給導入状況についても共有されました。

EV促進のための自治体向け連続セミナー

Climate Group、GR Japanとの協働で、自治体職員を対象としたEV導入促進に関する連続セミナーを企画・開催しました。EV市場・充電インフラをめぐる環境が急速に変化するなかで、自治体に求められる取り組みを、専門家・海外の自治体担当者とともに議論しました。

Policy Advocacy & Research

政策提言・調査研究

Community Power

地域エネルギー事業

  • ISEPが計画づくりを支援してきた千葉県匝瑳市が環境省「脱炭素先行地域」に採択されました。営農型太陽光発電を中心に脱炭素化を推進するこのプロジェクトに、ISEPは共同事業者として参画します。
  • ISEP、生活クラブ生協および地元農業者が出資する野辺山営農ソーラー株式会社による野辺山営農ソーラー発電所の落成式が、2023年10月23日に開催されました。あわせて、野辺山の新しい対話と交流の場をつくる運動「野辺山ヌーヴォー」のキックオフイベントが開催されました。
Networking

ネットワーキング

PHOTOS & IMAGES

メッセージ

今年度からISEPスタッフに仲間入りし、匝瑳市の脱炭素先行地域や自治体EV推進のプロジェクトなどに参加しています。入社して数ヶ月ですが、活動を通して、社会を良くするために尽力する多くの素敵な方々に出会えたことを嬉しく思います。持続可能なエネルギー社会を推進する一員として、わたしも一歩一歩、研究・実践を進めていきます。

高久ゆうISEP 研究員

「カーボンニュートラリティの研究を幅広くしていますね」と米国で言われてうれしくなりました。というのは、低炭素社会ですらマイナーであった30年前に、自分の興味で始めたからです。30年後には、グリーン電力サプライヤーと需要家が同じ平面で連携する、まさにデータ駆動型社会になるでしょう。自分もそのプレイヤーとして参加したいと思っています。

中田俊彦東北大学大学院工学研究科

データで見るISEP

87

正会員個人

8

正会員団体

59

協賛会員個人

6

協賛会員団体

20

インターン

10

ボランティア

地域エネルギー事業開発支援実績

86.484
累積設備導入量
253.6
累積事業規模

Design the future of energy democracy

エネルギーデモクラシーの未来をデザインする

環境エネルギー政策研究所は、持続可能で自立した地域と日本の自然エネルギー100%の実現に向け、政策提言と地域エネルギー事業の実践、人材育成を2000年から続けてきた独立・非営利の組織です。自然エネルギーに関わる政策・技術・コミュニティ・金融を結びつけ、1mmでも現実を動かすための取り組みを行なっています。
これからも私たちは、未来をみんなで選び取る「エネルギーデモクラシー」をコンセプトに、人と人、エネルギーと地域課題、地域と世界をつないでいきます。
そしていま、電気・熱・交通の統合やデジタル化によって、エネルギーの新しい世界が見えはじめています。私たちは自らの役割を再定義して、国内外の先駆的知見を組み合わせたソーシャルモデルとその価値を提案し、現実的な問題解決と大きな転換構想の双方を通して地域と日本のエネルギー転換に貢献し続けます。
Integrated development of policy, business, finance, and community

政策・ビジネス・ファイナンス・コミュニティの統合的発展

環境エネルギー政策研究所は、(1)エネルギー政策、(2)エネルギー 事業、(3)ファイナンス、(4)コミュニティの4つの領域を主要な活動領域としています。

持続可能なエネルギー社会を実現する上では、これらの領域の成熟と発展が不可欠であり、ISEPは地域エネルギー事業の実践を通じて新たなビジネス・ファイナンスモデルを構築し、その支援政策の提案をおこなっています。

Support

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